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「産後うつ」ひとりで悩まないで!

精神科の専門医、医療法人社団田上診療所院長の七里先生に「産後うつ」という病気と症状、対処法についてお話を伺いました。

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Q産後うつ とは?

A産じょく期(産後1年間)の精神障害です。

初回妊娠(第1子目)のほうがうつ状態になる傾向が高いです。
妊娠・出産は、女性にとって、大変大きな人生のイベントです。
妊娠・出産により、ホルモンバランスや生活環境の変化など、体も心も様々な変化があります。
その様々な変化が原因となりうつ症状を発症するのが「産後うつ」と言われるものです。

 

 

Q産後うつの症状はどのようなものですか?

A精神的な症状が身体にも影響します。

典型的な症状としては
○不眠(寝つきが悪い・寝てもすぐに目が覚める・早朝目が覚めてしまう・眠りが浅い等)
○食欲不振
○涙もろくなる
○不安感
○意欲の低下(育児が苦痛になる・何もする気にならない等)
○悲観的(不幸感・子供や自分の将来の事など、何事も悲観的に考えてしまう等)
○自信喪失・自責感(育児に対する自信がない・自分の子供なのか実感がない等)

・・・重症になると、楽になりたいなど、自殺願望まで出てくることもあります。

 



 

Qうつ症状の発症の要因・背景はどのようなものがありますか?

A現代社会におけるライフスタイルの変化も背景にあります。

ホルモンバランスの変化等のほか、
育児に対する不安、
夫婦関係の悪化
育児に対する夫の無理解、夫が非協力的、
・・・妻は子供にばかり関心が行き、
夫は今まで自分に向いていた関心が向けられなくなったことにより、
尚更、夫は理解のない発言・行動をとる傾向に・・・その結果、妻子が孤立状態に。
~夫婦関係が円満でなくなり、結果、妻はうつ症状を発症するケースが多いです。
また、几帳面で、責任感の強い性格の方が多いと言われています。
年齢で見ると、比較的若いお母さんのほうが情緒混乱を起こしやすい傾向にあるようです。
年齢を重ね、人生の経験値の多い方のほうが、発症は少ないようです。
また、産後うつが増えている要因として、次のようなことも背景にあるようです。

古来、日本では結婚に至るまでに、
①お見合い(もしくは恋愛)をし、
②結納~結婚式までの準備期間を充分おいて
③結婚
④出産
と、結婚し、いざ出産となるまでに長い時間をかけていました。

・・・そのことは、物理的な準備期間だけではなく、結果、精神的な準備期間ともなっていたのです。
ところが、現在、「おめでた婚」がかなり増えたことから、結婚・出産までのプロセスが短く、自分自身では気づいていなかったとしても、
心の準備・整理がきちんとできないまま出産に至るケースが多いことが、産後うつの症状を発症する方が増えている要因になっているのではないかと考えられます。
だからと言って、「おめでた婚」だからうつになる。
また、「おめでた婚」じゃないからうつにならない。
と一概に言えるものではありません。

また、夫の両親等との同居世帯よりも、単独世帯のほうが、発症率が高い傾向にあるようです。
他者の協力が必要な育児期に、協力を得にくかったり、相談のしどころがないことが、かなりのストレスになると言えます。

 



 

◆昔もあった 産後うつ

「産後のひだちが悪い」・・・産後、体調が悪くなかなか起き上がれない
昔からある言葉です。
これは、今でいう、「産後うつ」の状態のことも含まれます。
現代のような核家族が少なかった時代からも、産後うつは存在していました。
こういう環境だからうつになる。といちがいに言えるものではありませんが、これまでの診察歴からすると、先程申し上げたような、背景・生活環境を持ち合わせた患者様が多いのが現状です。

 

 

Q自分自身、そして周囲がうつ症状に気付いたらどのようにすればよいですか?

Aポイントは、「早期発見・早期治療」です。

産後のうつ症状に気付いたら、早めに専門医を受診し、カウンセリングを受けることをお勧めします。
ご自身でうつ症状に気付くことが出来れば、医療機関を受診する際、ぜひご主人と一緒に受診されて下さい。
治療・症状の改善には、ご主人の理解と協力が必要不可欠です。
また、周囲の人が気付いた場合も、ぜひ、ご主人やご家族と一緒に受診してください。

 

 

Q具体的な治療方法は?

Aまずは、ご家族に協力してもらい、妻の実家での静養をお勧めします。

・・・このような場合、まずは、妻の実家で静養することを勧めます。
嫁ぎ先では、気持ちが休まらないことが多いので、
妻の実家(実家が無理であれば、とにかく妻が気を使わずに甘えることができる身内の方などに協力をしてもらう)で静養するということがポイントです。
そのことによって、安定感を取り戻すことができます。
実家にいれば、赤ちゃんのことを実の親に色々聞いたり、協力を得やすいからです。
場合によって、ご主人には妻の実家に泊まりに行ってもらいます。
そして、必要に応じて「投薬治療」を行います。

 

 

Q投薬治療というと、母乳への影響は大丈夫なのですか?

A微量ですが、やはり母乳に薬の成分が出ます。

「薬を飲む」 となると、母乳育児の方は、断乳をし、人工栄養に切り替えて頂かなければなりません。
母乳をあげられず、不安に思うお母さんもいるかもしれませんが、早期発見・早期治療により、症状も早く改善されるケースが多いです。
まずは、お母さんの症状を改善することによって、健全な育児生活・生活環境を取り戻すことが先決です。
しっかり理解してもらった上で、投薬治療を開始します。

 

 

 

Q治療期間の目途は?

A産じょく期(産後1年)の終了とともに落ち着いてきます。

産後うつの特徴として、だいたい1年位で症状が落ち着いてきます。
いつまでもずっとこのつらい症状が続くのではない と考え、周囲の方もしっかり理解し、協力して頂ければと思います。

 

 

Q家族・周囲の人はどのような対応をすれば良いですか?

A励ましたり、焦らせるような言葉は禁物です!

一般のうつ症状の方に対する接し方と基本的には同じです。
絶対に避けてもらいたいのが、
「励ますこと」(がんばって!など)
「焦らせること」(早く善くなって など)
このような言葉は、うつ症状の方にとって、大変ストレスになるので、避けて下さい。
また、できるだけ、安心感を与えるような言動を心がけ、協力してあげて下さい。
そして、患者さんは、些細なことがきっかけで衝動的によからぬ行動を起こすかもしれません。
特に悲観的な発言が多い患者さんのご家族の方は、患者さんのSOSを見逃さぬよう気をつけて言動を観察して頂きたいと思います。

 


 

 

産後うつを経験した方の第2子・第3子の妊娠・出産にあたって

Q第1子出産時に産後うつを経験された方の場合、次の妊娠・出産をためらうケースもあるようですが。

A単科のみではなく、大学病院・総合病院等で、産科・精神科の2科での連携を考えます。

第1子出産時にうつ症状を発症された方は、次の妊娠・出産をためらう方が多いのが現状です。
でも、あきらめないで!
適切な対処方法、医療機関の連携等で、無事第2子・第3子をご出産された方もたくさんいらっしゃいます。
続けて投薬治療を行っている方が妊娠を希望する場合、まずは服薬を中止しなければなりません。
そのような場合には、産科のみ・精神科のみの単科単位でなく、2科で連携して診察・治療等が行える
「大学病院や総合病院」を受診してもらうようお話しています。
まずは、かかりつけの専門医などと相談してみましょう。

 

 

いつも頑張っているあなたへ
~時には甘えることも大切です

今回ご協力頂いた七里先生より、
いつも頑張っているママ達へのメッセージです。

「痛んだ翼を癒してあげることも必要です。」

これまで、産後うつに悩むお母さん達のカウンセリングをしてきた中で、こんなことがありました。

とても責任感の強いお母さん。
実家での静養を勧めたところ、
「私にはやらなければならない事があるし、実家に迷惑を掛けるから、とてもじゃないけど実家には頼れない」
そうお母さんは言われました。
そこで、私は、
「大事なお子さんももうけて、あなたは世の中に翼を広げて羽ばたこうとしているけれど、羽ばたかせている翼が、残念ながら痛んでいるんだ。だから、巣に戻って、この痛んだ翼を癒してあげなければならない。翼が治ったら、また大きく羽ばたけるから、それまで、巣(実家)に戻って癒しましょう。」
そう言うと、そのお母さんは納得して実家で静養をすることとなりました。

いつも頑張っているお母さん。
育児は本当に大変な仕事です。
思うように行かない事、ご主人がなかなか協力してくれない・・・等色々あると思います。

もし、辛くなったら、家族や友人など誰かに打ち明けてみてください。
恥ずかしいなんてことはありません。
育児をする上で、きっとみんなが少なからず感じていることです。
そして、専門医にも相談してみてください。
また大きく羽ばたくために翼を癒してあげる時間も必要です。

 


 

取材協力:医療法人 田上診療所(精神科・内科・小児科)

〒959-1502 新潟県南蒲原郡田上町大字田上丙1225
TEL0256-57-5015
(国道403号線沿い・湯田上温泉入口付近)地図を見る

診療時間
月~金曜日 ・午前の部  9:00~12:00までの受付
・午後の部17:00~18:00までの受付
土曜日・9:00~12:00までの受付

~ひとつひとつ、丁寧にわかりやすく説明してくださったり、
とても物越しの柔らかい、優しい先生です。
七里先生、ご協力ありがとうございました。